自分の体型に合わないガードルと奮闘していた骨格ウェーブ女子の思い出話です。
※登場人物は全て仮名です。
朝7時。鏡の前で私、桜井美波(28歳・骨格ウェーブ女子)は決意に満ちていた。
「今日こそ、完璧なシルエットで出社するぞ!」
スイーツ大好き!でも最近、お腹の肉がちょいと気になる美波。
手に握るは、ネットで★4.8の高評価を誇る「鉄壁ハイウエストガードル」。
『驚異の引き締め力!お腹-5cm保証!』(商品説明に踊る文字に惹かれ購入。)
「これさえあれば…!」
意気揚々と足を通す。ぐいぐい引き上げる。お腹の肉がギュウウウと悲鳴を上げる。
「う、苦しい…でも、これが美への代償…!」
息を止めてホックを留める。鏡を見る。
「…あれ?」
確かにお腹は平らになった。でも、なんだろう。この違和感。まるで下半身だけ解像度が上がったような、妙な存在感。おしり??
「気のせいだよね。ガードルってこういうものだし」
そう自分に言い聞かせ、タイトスカートを履く。完璧。いや、完璧なはず。
通勤電車。隣の女性がチラリと私の下半身を見た気がした。気のせいだろうか。
会社に着いて、まず直面したのは試練の階段。
我が社はレトロなビルの3階。エレベーターはあるけど、朝は混むから階段派の私。
1段目。
「…ん?」
2段目。
「あれ、スカート…ずり上がってきてる…?」
3段目。
「ちょ、待って!!」
太もも部分のガードルがギチギチに締まりすぎて、階段を上がるたびにスカートを巻き込んで上昇していく。
必死で裾を押さえながら、横をむいてカニ歩きで階段を上る28歳。
後ろから来た新入社員の男の子に「大丈夫ですか?」と心配され、顔面紅潮。
「だ、大丈夫です!スカートが…その、滑りやすい素材で…!」
苦しい言い訳を残し、3階の職場へ逃げ込んだ。
デスクに着くと、お隣の先輩・麻美さん(同じく骨格ストレート族・補正下着マニア)が声をかけてきた。
「美波ちゃん、今日なんか…歩き方、ぎこちなくない?」
「え!?そ、そうですか?」
「あと、失礼だけど…シルエットがいつもと違うというか…」
麻美さんは首を傾げている。
その日のランチ。同期の結衣に恐る恐る聞いてみた。
「ねえ、私って下半身、太く見える?」
「え?今日はちょっと…あ、ごめん!でも普段はそんなことないよ!今日はなんか、下半身が主張してるっていうか…」
ガーン。
帰宅後、全身鏡の前で360度チェックしてみる。
正面:お腹はペタンコ。完璧。
横:…あれ?なんか腰の位置、低くない?
後ろ:お尻が…平ら…?というか四角い?丸みどこいった?
「嘘でしょ…こんなに頑張ってるのに…」
スマホで「ガードル 下半身 太く見える」と検索。
出てきたのは、衝撃の情報だった。
『骨格ウェーブの方は、ハイウエストで強力に締めると逆効果!下重心が強調されます』
「…は?」
その夜、私はネットで自分の体型について調べまくった。
「骨格ウェーブの特徴:下半身に柔らかさがある、腰位置が低め、上半身が華奢…」
全部当てはまる。洋ナシ型ってやつですかね
「ウェーブタイプがやってはいけない補正:お腹の過度な締め付け、太もものきつい締め付け、お尻の丸みを潰すこと…」
あ、駄目だ!全部やってた。
画面を見つめる私の目から、涙がポロリ。
「私、3年間…間違ったガードル履いてたの…?」
思い返せば、心当たりがありすぎた。
友人の結婚式で撮った集合写真。ドレスが似合わないと思っていたけど、今見ると下半身だけ妙に膨張して見えていた。
「全部引き締めればいいってもんじゃなかったんだ…」
呆然としていると、スマホに広告が。
『骨格ウェーブ専用ガードル、新発売』
「…専用?」
レビューを読む。
「ウェーブですが、初めて下半身がスッキリ見えました!」 「腰位置が上がって見える魔法みたい」 「太もも部分がきつくないのに、ちゃんと細見え」
半信半疑で、ポチる。
「どうせまた失敗するんだろうな…」
3日後、商品到着。
パッケージを開ける。触ってみる。
「…あれ、なんか柔らかい?」
今まで買ってきたガードルは、触っただけで戦闘力を感じる硬さだった。でもこれは、しなやかで優しい感触。
「大丈夫かな、これで補正できるの?」
恐る恐る履いてみる。
すると。
「…え?」
スルスルと、体に吸い付くように入っていく。
ウエスト部分は優しくフィット。でも苦しくない。 下腹部はしっかり押さえられてる。でも呼吸できる。 お尻の丸みが…潰れてない。 太もも部分は…締め付けてないのに、スッキリしてる?
「なにこれ…魔法…?」
鏡を見る。
正面:自然なくびれ。でもお腹は平ら。
横:腰の位置が…上がってる!!
後ろ:お尻が丸い。自然なカーブ。
「嘘…これ、私…?」
試しにタイトスカートを履く。階段を上がってみる。
スルスル上がれる。スカートも上がってこない。
「上がらない…上がってこないよ…!」
感動のあまり、自宅の階段を3往復した。
翌日の出社。
麻美さんが目を丸くした。
「美波ちゃん、なんか今日、めっちゃスタイル良く見えない!?」
結衣も驚いた。
「えっ、痩せた?っていうか、脚長くなった?」
「何も変わってないよ。ただ…ガードル変えただけ」
「ガードル!?」
その日の帰り道、私はスキップしそうになった。
体が軽い。心も軽い。
3年間、私は自分の体と戦っていた。
でも本当は、味方につければよかったんだ。
骨格ウェーブの柔らかな曲線を潰すんじゃなくて、活かせばよかったんだ。
「ごめんね、私の体。これからは大事にするね」
翌週、クローゼットの奥に眠る「鉄壁ガードルコレクション」を断捨離した。
合計7枚。投資額、約4万円。
「高い授業料だったけど…学べてよかった」
そして今、私は伝道師として友人たちに語っている。
「ガードルはね、締めればいいってもんじゃないんだよ。大事なのは、自分の骨格に合ったものを選ぶこと」
かつての私のように迷える骨格ウェーブの同志たちへ。
あなたの下半身が気になるのは、あなたのせいじゃない。
ガードルが、体型と喧嘩してるだけ。
仲直りさせてあげれば、世界は変わる。
私が保証する。
だって私、3年も無駄にしたんだから。
【完】
〜あとがき〜
美波は今日も、骨格ウェーブ専用ガードルで快適に過ごしている。 階段も怖くない。 写真も怖くない。 ただ、過去の写真を見返すたびに「あの頃の私…」と遠い目をするのが、唯一の後遺症である。